第1編 自然環境

 
第1章 自然環境

 
 第1節 位置・面積

位 置
 当町は、北海道の渡島半島北部に位置し、内浦湾(噴火湾)に沿って国鉄函館本線が市街地の中心部を通過しており、南から、落部・野田生・山越・八雲・山崎・黒岩の六つの駅がある。この鉄道と並行して国道5号線が市街地を貫通し、さらにこれから分岐している道道八雲今金線、八雲熊石線(現、国道229号線)、八雲厚沢部線があり、自動車交通が急増するにしたがい、檜山管内と結ぶ極めて重要な路線としての役割を果たしている。
 経度は、東経140度27分41秒、西経140度1分5秒、緯度は、南端北緯42度1分13秒、北端北緯42度23分35秒の地に位置している。

面 積
 東は内浦湾に面し、北はルコツ川を境にして長万部町に、西は一連の山脈を境に、檜山・爾志・瀬棚の三郡六か町村と界し、南は茂無部川によって森町と接しており、東西38キロメートル、南北45キロメートルに及び、面積736・46平方キロメートルを有している。


 第2節 地形・地質

地 形
 当町は、突山して特異な景観を呈する山峰、800メートル級以上の町界尾根によって囲まれている。管内の大部分は300〜600メートル級の山地で構成されているが、町界の尾根筋から源を発する、遊楽部川・野田追川・落部川など、扇状に支流を広げる河川によって、下流には低地や丘陵地を形成している。
 この地域の地形を大別すると、
 1 主として新第三紀の地層および火成岩からなる開析の著しい山地
 2 いくつかの段丘面と、それに連なる丘陵地
 3 各河川や海岸地帯に広がる沖積地
に類別することができる。

地質
 当町には、少なくとも1億数千万年前の古生代から現世までの、各地質時代につくられたいろいろな堆積岩や火成岩類が分布しているが、大半が新第三紀の地層からなっている。なかでも新第三紀中新世の地層の占める割合が大きい。最も古い岩石は、先第三紀層のもので、粘板岩・砂岩・チャートおよび珪岩などである。この先第三紀層は、確証があるわけではないが、古生代の地層と考えられている。
 先第三紀層を貫いて花崗閃緑岩が分布しているが、この岩石の迸入時期は、中世代白亜紀という説が有力である。
 当町の大部分を占めて分布する新第三紀層は、先第三紀層や花崗閃緑岩を覆って発達している。したがって古生代以降、中生代の地層ばかりでなく、古第三紀の地層をも欠いて、大きな不整合関係で先第三紀層と新第三紀層とが接していることになる。
 新第三紀層は、中新世の福山層、訓縫層、八雲層、黒松内層および鮮新世の瀬棚層、ペンケ岳安山岩熔岩、横山安山岩熔岩などに分けられる。これらの地層は、西部の町界稜線部から東部に向かって順次に上位の新しい地層が出現している。しかし、海岸線に近い東部のルコツ岳から立岩までの稜線部や、浜松から鍋岳に至る南北の地帯には、比較的下位の地層が、再び出現している大きな背斜構造を形づくっている。
 福山層は新第三紀の最下位の地層で、火山砕屑岩で構成されている。訓縫層も主に火山砕屑岩から成り立っているが、基底部には礫岩や頁岩など堆積岩が発達していて、福山層以下の地層を不整合に覆っている。福山層や訓縫層の火山砕屑岩の中には、緑色を帯びているものが多い。
 訓縫層の上には頁岩や泥岩からなる八雲層が整合的に重なっているが、この八雲層の基底部には火山砕屑岩が局部的に発達しており、また八雲層に整合的に連続して、シルト岩・砂岩・凝灰岩などで構成される黒松内層が重なっている。西部山地や落部川流域の黒松内層は、安山岩熔岩とその火山砕屑岩の発達が著しく、一部は訓縫層や八雲層を不整合に覆っていることがある。
 鮮新世の瀬棚層は、北西部地域では黒松内層に整合的に重なっているが、それ以外の地域では八雲層以下の地層と不整合に接している。主に礫岩・砂岩でなっている。ペンケ岳安山岩熔岩や横山安山岩熔岩は、ともに鮮新世末の噴出物と考えられ、独立した山体を構成している。
 新第三紀は、それぞれの地層中に火山砕屑岩や火山岩を介在していることから明らかなように、活発な火山活動が行われた時代である。したがって火山性堆積岩類や熔岩のほかに、いろいろな種類の火成岩類が岩脈や岩床などの産出状態で分布している。
 第四紀の地層は、更新世の石倉層・段丘堆積物と、現世の種々な未固結堆積物に大きく分けられている。石倉層は、濁川盆地の形成に関係ある火山噴出物である。段丘堆積物は、高低二段に大別される段丘面を構成する砂礫層である。現世の堆積物は、崖錐堆積物・扇状堆積物・氾濫原堆積物・泥炭層・砂堤砂などに分けられるが、このほかに駒ヶ岳によってもたらされた火山灰が広く覆っている。
 このように当町には、先第三紀から第四紀までのいろいろな堆積岩や火成岩塀が分布している。


 第3節 気象


気象の特色
 当町は道南地方にあるが特殊気象に属している。盛夏期でも気温が30度を超える日が極めて少なく、冷涼性の海洋気象に支配されることもあって、全般的に気温は低い。日照時間も6、7月は海霧の影響を受けて少ないのが通常であり、秋は比較的温暖な日が多い。夏涼しく冬暖かいという特色をもっている。

気温
 昭和34年からの20年間で最も気温が高かったのは、47年8月17日の摂氏33・1度であるが、平均すると31・2度で、その時期は7月下旬から8月中旬の間である。最低気温は53年2月17日の零下19・2度であり、平均すると15・5度で、その時期は1月上旬から2月下旬である。

積雪
 初雪は通常10月下旬から11月中旬の間であるが、山間周辺地帯では早い。しかし、根雪となるのは12月中旬から下旬である。10年間の根雪期間の平均は、111日となっている。積雪量は町の中央部以北で多く、以南は少ない。このため、南部地帯にある野田生・落部に行くにしたがい少なくなっているが、山間部では多い。内浦湾沿岸の町村のなかでは多雪地帯となっている。

融雪
 融雪は遅く、3月下旬から始まり4月下旬にかけて消滅する。

降水量
 遊楽部岳の影響で、本道の中でも有数の多雨地帯に属している。10年間の最高雨量の平均は94・4ミリとなっているが、同期間中の最高雨量は46年9月4日の194ミリで、最も低かったのは49年6月6日の38ミリがある。

風速
 夏期は北東風、冬期は南西風が多い。年間平均風速は秒速13メートルで、特に5月の乾燥期と9月の台風期に風の強い日が多いが、その他は比較的弱い日が多い。

観測種目別の状況は次表のとおりである。

観測種目 順位 数  値 出現年月日
最高気温
(昭34年〜昭53年)
1位 33・1度℃ 昭和47・ 8・17
2位 33・0度〃 昭和46・ 8・ 2
3位 32・6度〃 昭和48・ 8・10
4位 32・0度〃 昭和45・ 7・25
昭和50・ 8・ 1
5位 31・8度〃 昭和35・ 8・ 6
最低気温
(昭34年〜昭53年)
1位 零下19・2度℃ 昭和53・ 2・17
2位 〃 19・0度〃 昭和41・ 1・19
昭和52・ 1・29
3位 〃 18・8度〃 昭和42・ 1・16
4位 〃 17・1度〃 昭和38・ 1・ 5
昭和51・ 1・26
5位 〃 16・4度〃 昭和45・ 1・ 5
初  雪
(昭34年〜昭53年)
1位   昭和48・10・12
2位   昭和46・10・24
3位   昭和52・10・25
4位   昭和53・10・16
5位   昭和45・10・27
最多積雪
(昭34年〜昭53年)
1位 1・60メートル 昭和45・ 3・22
2位 1・44〃 昭和52・ 2・22
3位 1・29〃 昭和44・ 2・26
4位 1・28〃 昭和36・ 3・ 2
5位 1・25〃 昭和42・ 1・15
最大一日降水量
(昭25年〜昭49年)
1位 194・0ミリメートル 昭和46・ 9・ 4
2位 147・0〃 昭和40・ 9・10
3位 122・0〃 昭和50・ 8・23
4位 114・5〃 昭和37・ 8・ 3
5位 114・0〃 昭和48・ 8・17