熊石町史
延叙歴見絵図(目賀田守陰筆――北海道大学中央図書館蔵
槌打の舞図(鐙谷抱園筆――熊石町役場所蔵
雲石山 門昌庵山門
奇岩 雲石
発刊にあたって
能石町長 赤泊茂松
銀鱗躍るニシンの千石場所と言われた恵み豊かな日本海を母なる海として、郷土熊石町は古くから漁業の町として栄えてまいりました。
郷土の礎を築いたとされる歴史的な最初の歩みは、遠く鎌倉時代に遡ることになります。
この頃から和人が道南の海岸に移住しはじめ、ここ熊石を永住の地として根をおろし、先人たちが厳しい風土に耐え、苦難を乗り越えてたゆまない開拓が進められてきました。
明治5年には熊石、前川、相沼の三村に戸長役場が設置され、しだいに自治体としての動きをはじめ、明治35年には二級町村制施行により熊石村となりました。
その後、昭和37年に待望の町制が施行され、現在までの発展を続けてきたものであります。
今年は、熊石が村から町に生まれかわってから四半世紀25周年という意義深い年を迎えるに至りました。
町制施行25周年にふさわしい記念事業の一つとして、郷土が歩み続けた歴史を明らかにするとともに、豊かな町づくりを目指す現在の姿を町史として編集し、未来への伝言とすることが今に生きる私たちの使命であると考え、昭和57年から編纂を進め、このほど発刊の運びとなりました。
この野史が熊石町の将来を担い、新たな歴史をつくる次の世代の方々が先人の労苦に思いをはせ、郷土の限りない発展の一助になれば幸いであります。
ここに町史編纂委員会委員各位をはじめ貴重な資料の提供や編纂にご協力いただきました関係各位に対し、心からお礼と感謝を申し上げ、発刊のことばといたします。
昭和62年9月30日
町史発刊によせて
能石町議会議長 折戸敏雄
町政施行25周年の記念すべき年に当たり、郷土の歴史に想いを馳せ、長い曲折の歳月と幾多の変遷を経て発展した今日までの歴史の流れを見据え、先人の方々の逞しい生命力が脈打つような町史の刊行に、心から喜びを感ずるものであります。
町の開基の根拠となった日持上人の事蹟や様々な歴史の事象の中に、その重みを感ずると共に、特に北海道の歴史の黎明期に熊石がはたして来た重要な役割等、貴重な記述に満ち満ちていることに深い驚きをおぼえます。そしてこの熊石町史の持つ意義の大きさに改めて敬意を表する次第であります。
熊石は古くから漁業を中心にして栄えてきましたが、それは決して安易なものではありませんでした。寛保元年(1741)の大島の大噴火による津波は私達子どもの頃から良く聞かされており、当時としては再起不能に近い大惨事であったろうと思われるのであります。しかし、先人の不撓不屈の根性と英知の結集によって幸いにも復興をなしとげて来たわけであり、誠に筆舌につくし難い苦労があったと偲ばれるのであります。
松前藩の時代から明治を経て戦中戦後と、たくさんの先人が郷土建設にひたむきな努力を傾注し今日の発展の基礎を築いて来ました。私達はこのことを高く評価し、後世に伝える必要かおり、ここに熊石町史が編さんされた大きな意味があると思う次第であります。
今日、時代の変化はより厳しさを増し、国も地方自治体も等しく厳しい試練に立たされております。今こそ先人の開拓魂を教訓として町民一体となった新しい町づくりを目ざす必要があります。そして、そのための礎として熊石町史が広く活用されるものと大いに期待するものであります。
最後に町史刊行に当たり、この大事業に携わった関係各位に深甚の敬意を表するとともに、この立派な熊石町史の刊行を心からお祝い申し上げ発刊に当たっての祝辞といたします。
昭和62年9月30日